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アイスパック(アイスノン) vs 冷却ジェル(クーリングジェル)

日本で最初に導入された脱毛用レーザー機はサイノシュア社のロングパルスアレキサンドライト・フォトジェニカLPIRで、 現在も最大のシェアを誇っております。
私が自分の足と腕にテスト照射してみたのが1997年6月、3ヶ月間の観察期間を経て実際にクリニックとしてスタートしたのが同年9月です。 当然のことながら、最初の頃は販社も情報が乏しく通り一遍のマニュアルしかありませんでした。
当時は次のように説明を受けました。 すなわち、 「氷(アイスパック)などで冷却すれば痛みは軽減するが、皮膚温度が下がるので毛根の燃焼が妨げられるので脱毛効果が落ちるので使用しないのが原則である」、 「照射時にジェルを塗ると熱が吸収されるのでヤケドの予防によいが、氷と同様に毛根の燃焼温度が下がる可能性があり、またレーザー光線の透過性が悪くなりジェルの厚みにムラがあると設定した通りにレーザーが皮膚に届かないことがある」 です。
その後、国内のLPIRが100台を越えた時点でユーザーミーティングが開かれて多数の症例が検討され、アイスパックとジェルの役割が認識され、 現行のガイドライン(Ver.2 1999/8/1)には、 「ジェル等を0.5~1mm程度の厚みで塗布する。熱伝導の良いゼリーを使用する事で、表皮の冷却が促進される」、 「照射前に皮膚を冷却すると、痛みが軽減されるが、脱毛効果が低下する可能性がある」 と記載されて現在に至っております。

ヤケドの予防や痛みの軽減を目的として、レーザー照射の前後に皮膚を氷で冷やしたり透明のジェルを塗ったりするわけで、 同じように感じられるかもしれませんが両者の目的は異なります。 医師や看護婦などの医療従事者のなかにも違いを理解していない人がいるようですので、ここで説明をさせていただきます。

(きたない図で申しわけありません。私の手書きです)

左を御覧ください。皮膚の外側には空気があります。一方、皮膚には大量の水分が含まれています。 空気は水に比べて熱の伝導が悪いので、毛根が燃えて発生した熱はすべて皮膚に吸収されてしまいます。 毛根が太いと、あるいは密集していると発生する熱量は大きくなり、すべての熱を吸収した皮膚は堪えきれずに表皮にヤケドをおこしてしまうことがあります。
右を御覧ください。透明なジェルを塗ってからレーザーを照射すると、皮膚の浅層に伝わった熱はジェルに吸収されてしまいますからヤケドをおこしません。 一方で、中層~深層ではジェルを塗らない場合と同様に熱が伝わって毛包を破壊し脱毛の効果は削がれないというわけです。
ジェルを塗らずに氷で冷やした場合、知覚は鈍麻して痛みは軽減しますが、発生した熱はすべて皮膚に吸収されるのでヤケドがおきやすい状況は同じです。 (ヤケドをおこさないほど強烈に冷やすと上記のガイドラインにあるように脱毛効果が減弱するおそれがあります)
というわけで、どのような場合でもジェルを塗って照射するというのは正解なのです。 氷による冷却は男性のヒゲのように痛みが非常に強い場合に限ったほうが無難でしょう。

では、照射するたびに冷風が出るアレキサンドライトレーザー機と 循環型冷却装置がついたダイオード機の場合には氷が必要ないことは理解できますが、 ジェルも必要ないのでしょうか?

(ますます、きたなくなってしまいました)

左を御覧ください。いくら冷風をかけても依然として空気は存在します。発生する熱量が多い場合にはヤケドが心配です。 ジェルを塗った状態で冷風をかけると熱を吸収して温度が上がったジェルを冷やすことになるので効果があるかもしれませんね。
右を御覧ください。ダイオードレーザーの場合には冷却装置を皮膚に押し当てていますから熱はそのままダイレクトに冷却チップに吸収されてしまいます。 きっと、ジェルは必要ないとおもわれるでしょう。
販社の解説書(Ver.7 2000/6/29)にも「通常の使用ではジェルの必要は全くありません」と書かれています。

レーザー照射を繰り返していくと毛の量が減ってきて、残るのは弱い出力で反応しない産毛だけになってきます。 その産毛も処理しようとすると出力をあげるしかないわけです。 別文で書きましたように、アレキサンドライトレーザーの場合は20ジュールが安全の限界です。 ダイオードでは20ジュールはもとより30ジュール・40ジュールという高出力での照射も問題なくできますし、 皮膚の状態が許せば機械の限界である60ジュールでも可能です。
とはいっても、20ジュールを越すと甘く見てはトラブルをおこします。 マニュアルどおり、冷却装置を皮膚に強く押し当てながら照射すれば問題ないのですが、冷却装置が皮膚から離れると高出力の場合は、とたんにヤケドします。 冷却装置と皮膚の間に空気の層があれば熱が皮膚から発散しないからです。 皮膚に押し当てない施術者のテクニックが未熟であるといってしまえば、それでお終いですが 現実にヒザ上・ヒザ下をおこなうと3~4時間かかりますし、内股などの狭い部位では直角に装置を当てづらいところもあります。 圧迫が足りなくなったとしても、咎められるべきは施術者ではなくて、無理を押しつけるシステムであると私は考えます。 また、確実に押し当てていても乾燥肌の場合には皮膚の表面の角質層に細かい空気の粒子が存在していますから 高出力の場合にはヤケドをおこす可能性があります。

では、どうしたらよいのでしょうか。


販社は必要ないとしていますが、ジェルを塗るのです。 図のように、たまたま冷却チップが皮膚から離れてしまえばチップと皮膚の間に空気の層ができますし、 チップを押し当てていても乾燥肌であればカサカサした表皮の中の空気を取り除くことはできません。 ジェルをたっぷり塗ったうえで照射をおこなえば、多少チップが浮きあがっても乾燥肌であっても、 発生した熱はジェルを通して抵抗なく冷却チップに吸収されるのです。
販社のマニュアルどおりにジェルを使わずに照射して、ごく希にですが軽度のヤケドを経験することがありました。 そして、それらは出力が高いときにだけおきることに気づきました。その反省から、どのような場合でもジェルを使うべきとの結論に達したのです。 ジェルを使った処置のムービーを作りました。こちらを御覧ください。

この3年間でレーザー脱毛という言葉は若い女性なら誰でも知っているように市民権を得ましたが、それに使用すべきジェルの重要性の認識は残念ながらまだまだです。 必要性はわかっても、どのようなジェルを使うべきかの情報は医療関係者の間にも行き渡っていません、 というか、そのような目的でつくられたジェルというものが存在しないのです。
心電図を測定するための通電用のジェルを冷却用に使用されることが多いようです。 私も使用してみましたが粘度や使用後の除去の容易度などで今ひとつしっくりしませんでした。

本文をお読みいただいている皆様には私の本業が「安全なピアスの追求」であることは御存じだとおもいます。 そのセイフティピアスシステムの一翼を担うのがアフターケア用の 「ピアス・ケア・ジェル」であります。
「ピアス・ケア・ジェル」を開発する際に、粘度の調整に随分苦労し、そのデータを残してあることをおもいだし、 レーザー脱毛専用の冷却ジェルがないのであれば造ってみようと考えました。 そしてそれは、古いメモを参考にすれば、それほど困難な作業ではありませんでした。
そうしてできあがったのが「レーザークーラント」です。
現在、JPSのクリニックでは冷却チップのついたダイオードレーザーだけを使用しておりますが、 それでも出力に関係なく全例に「レーザークーラント」を使用するようにしています。

2000年7月4日
渋谷高橋医院 院長
高橋知之 記
(本文の無断複写・転用を禁じます)




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