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レーザー照射後の痒みと毛嚢炎

レーザー脱毛や光脱毛の合併症のほとんどは皮膚のヤケドです。
こちらに書いたような施術の基本的手技を守ればヤケドの頻度というのは非常に低いですし、 また起きたとしても一時的なものです。
男性のヒゲや色黒の肌の人の場合には確率が高くなりますし、細い毛に対しては高出力での照射が必要となりますので確率もまた高くなります。
皮膚のヤケドはレーザー脱毛には避けて通れない合併症といえますが、ある程度は事前に予測できうるのです。

ヤケドほど頻度が高くないですが、事前に予測できない合併症に「毛嚢炎」があります。
施術マニュアルが徹底されればヤケドの頻度が下がってきますので、相対的に毛嚢炎が増えてきます。
毛嚢炎の機序と対策を説明しておきましょう。

この写真の人は照射直後から5日目までは何の問題もなく過ごしていたそうです。6日目になって痒くなりだして、 写真のように所々の毛穴が赤くなって虫刺され様の変化をきたすようになったということで相談にみえられました。 (来院されたのは照射後8日目です)

こちらは右足の側面写真です。 とても痒くて睡眠時に無意識にひっ掻いてしまうようで、2日間でずいぶんと症状が悪化したということです。 写真の右上に写っている左足の母趾などは、いかにも痒そうです。
通常の皮膚のヤケドならばレーザー照射直後、少なくともクリニックから帰る時点で起きたのが本人にも施術者にも分かります。 このように照射後の何日かは異常がなく、4~5日目あるいは1週間目くらいで発症するというのがこの毛嚢炎の特徴です。

レーザー脱毛の原理についてはこちらで詳しく説明していますが、簡単に言えば、

1) レーザーエネルギーが毛根に集中し爆発的に燃焼する。
2) 毛根の熱が波及して毛嚢がヤケドする。
3) 毛嚢壁のバルジという部位にある毛の再生を司る細胞(幹細胞)が障害を受ける。
4) 永久脱毛となる。

ということです。

すなわち、もし、レーザー照射後の毛嚢を切り開いてみれば壁全体にヤケドが起きているということなのです。 一方、皮膚側から観察すればヤケドは毛の周囲のみですから写真のようにみえます。

レーザー照射によってヤケドした毛嚢壁からは滲出液がでてきます。通常はそのまま再吸収されるのですが、量が多いと皮膚表面にまででてきます。 あるいは毛が太い場合には毛穴の周りの皮膚もヤケドしますからそこからの滲出液もでてきます。
個人差がありますがこれらの反応には痒みを伴います。 痒いためにひっ掻いてバイ菌がはいって炎症が起きていくというのがレーザー脱毛による毛嚢炎です。 施術直後は毛根は爆発的に燃える、すなわち相当な高温になりますので毛穴の中に常在しているバイ菌は殺菌されてしまいます。 毛嚢炎を起こすバイ菌はひっ掻いて、後から毛穴にはいってくるわけです。
ですから、冒頭でお示しした人のように、照射から4~5日して発症するというのが特徴となるわけです。

これは別の人のヒザ下1週間後です。
このような毛嚢炎が起きた場合には、抗炎症剤と抗生物質の外用や内服が唯一の治療です。 抗炎症剤の外用とはステロイド軟膏のことです。 ときどき、ステロイド使用に対して強い抵抗を示す患者さんがいらっしゃいますが、 この場合にはアトピーのような慢性皮膚炎に対する使用とは違いますので大量短期間の使用が奏効するのですが、 納得してくださらない困った患者さんもいらっしゃいます。 (そのような方は、代わりに非ステロイド系の軟膏をと所望されるのですが効果が少なくそれ自体の皮膚炎が多いので私は好きではありません)
痒みが強い場合には、ひっ掻かないようにと言っても無理ですので抗掻痒剤も必要です。
そのようにしてしのいでいると、だいたいは1週間くらいで治まってきます。 すなわち、ほとんどの場合、照射から1ヶ月くらいで完全に治癒しますので次回のレーザー照射には影響ありません。

これは『照射して自宅に帰っても赤味が引きません。 「押す・拭く・ジェル」が足りなくてヤケドしたのでしょうか?』 といってメールで送られてきた写真で、照射からちょうど24時間目だそうです。痒みも痛みもないそうです。
赤味と膨隆は毛穴に一致しています。 毛穴同士が接近しているところでは毛穴と毛穴の間の皮膚も発赤がありますが、毛穴同士が離れているところでは間の皮膚は正常です。 過剰反応気味ではありますが施術ミスでも毛嚢炎でもありません。 バイ菌がはいらないように清潔を保って冷してもらうことになりました。
毛嚢炎は毛が太いほど起きやすいので、男性のヒゲ、女性の場合はワキ・ビキニ・ヒザ下です。 ワキやビキニの場合は範囲が狭いので実際にはそれほど問題とはなりませんし、 男性のヒゲの場合は照射面全体が毛嚢炎どころではない 悲惨な状態 になりますのでこれも問題外です。
結局、問題なのはヒザ下です。範囲が広いので痒みの強い人はとてもたいへんです。 毛嚢炎が起きた人が次に脱毛する際には、汗をかきやすい夏場は避けるなど工夫しながら 私は予防的に抗炎症剤と抗生物質の外用や内服および抗掻痒剤を処方しております。 それで3~4回しのげば毛はまばらになってきますので段々と毛嚢炎は起きなくなってきます。
毛嚢炎が起きたからといって永久脱毛をあきらめることはありません。毛嚢炎は太い毛に起きやすい。 すなわち脱毛しやすい人に起きやすいので、何回かを乗り越えれば最終的にはツルツルの足になります。
1回目の脱毛の際に毛嚢炎が起きるかどうかを予見することは不可能ですし、頻度的には1000人~2000人に1~2人ですから、 前もって全員に予防的に薬を処方するというのも(薬自体の副作用も考えれば)いきすぎだとおもいます。
結論的には、「トラブルゼロを保証するものではありません。なにか調子が悪いようだと御連絡ください。診察にお越しください」 という脱毛一般の注意をくり返すしかありません。

毛嚢炎を乗りきればツルツルの足が待っていると書きましたが、ツルツルの足は毛嚢炎を起こしても起こさなくっても、毛根が高温で燃えた後にやってきます。
エステ業界の人の話では、毛嚢炎の頻度は、1000人~2000人に1~2人よりも遥かに多いようです。 エステで使用されている機械の殆どは私が使用しているような皮膚冷却装置がついていません。 ヤケドしやすいので自ずと(永久脱毛できるかどうか疑問のあるような)低出力での施術を行なわざるをえないわけです。 永久脱毛できるだけのエネルギーを毛根に加えることができないということは毛根は爆発的に燃えませんので毛包内の常在菌は殺菌されません。 永久脱毛はできないのに毛嚢炎は起きる・・・。困ったことですね。

毛嚢炎が起きると、とても痒がる人がいらっしゃいます。 「どうにかしてください。もっと、なにかしてください」と涙ながらに訴えられる方もいらっしゃいます。
ですが、私は上記治療の他につけ加えるものはないとおもいます。 ときどき、御自身で湿布薬を貼る人もいらいらっしゃいますが賛成できません。
これからお見せするのは、ある施設から相談を受けた毛嚢炎です。


最初はこの程度だったそうです。


痒みが強いので炎症を治めるために「冷湿布」を1間程行なったところ、湿布したところが真っ赤になってきました。(湿布していないところとの境界が鮮明です) 湿布かぶれと判断して非ステロイド系の抗炎症軟膏に切り換えたそうです。


1週間後です。


更に1週間後です。一向によくなっていません。


更に1週間後です。改善しないので患者さんが薬を塗らなかったそうで、それで治ってきています。

振り返ってみれば、
まずレーザー脱毛によって毛嚢炎が起きた ⇒湿布薬でかぶれた ⇒かわりに使った非ステロイド系の抗炎症軟膏でかぶれた ⇒なにもつけなかったら治った
ということのようです。

レーザー照射後の痒みと毛嚢炎、とても頭が痛い問題です・・・。

2003年8月23日
渋谷高橋医院 院長
高橋知之




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