産毛について
(本項をお読みになる前に、レーザー脱毛の原理をお読みください)
色の黒い毛ほどメラニン顆粒が多いので脱毛効果は高く、白髪の脱毛は不可能です。
毛が太くなるほど体積に対する表面積の割合が減りますから、熱の拡散効率が悪くなり、脱毛効果が高くなります。
ですから、レーザーは色が薄くて細い産毛の脱毛は不得意なのです。
産毛の脱毛効果を高めるには二つの方法が理論的には考えられます。
一つは、太い毛に対して照射する場合よりも、レーザー1発の持続時間を短くすることです。
太い毛だけにあわせてロングパルスで照射すると、それぞれ独立したメラニン顆粒は体積に対する表面積が大きいので、
すぐに熱を放散してしまい破壊されないとレーザー脱毛の原理で述べました。
同じく細い毛は太い毛に比較して体積に対する表面積が大きいので、
独立したメラニン顆粒で放熱がおこったのと同じような放熱現象がおこり破壊をまぬがれてしまっていると考えられるのです。
内部に蓄熱し爆発的燃焼がおきるまで照射持続時間を短くしてみるというアイデアです。
サイノシュア社のLPIRには1000分の5秒という設定ができます。
その設定で実際に何人かのスタッフの産毛でテストしてみましたが、残念ながら、
皮膚に散在している個々のメラニン顆粒も反応するため照射部位全体にヤケドがおきる頻度が高いことがわかりました。
ところで、レーザー脱毛の最も頻度の高い合併症(副作用)はヤケドであり、ヤケドがおさまった後の色素沈着(シミ)です。
ヤケドは毛根の爆発的燃焼によっておきるわけですから、毛孔に一致して発生するのが普通です。
そのようなヤケドの後の色素沈着のほとんどは一時的なもので、紫外線対策などを怠らない限り6ヶ月程度で消失していきます。
毛孔に一致して発生したロングパルスによるヤケドの場合は皮膚に散在するメラニン顆粒は無傷ですが、
照射持続時間を短くして発生したヤケドでは皮膚に散在しているメラニン顆粒の爆発的燃焼をともなっています。
ヤケドが急性期をすぎるとメラニン顆粒が消失していることによる色素脱出(白斑)が診とめられるようになります。
そして、この色素脱出は永久的に続くのです。レーザーの照射部に一致して、直径1cm前後の真っ白な水玉模様となるのです。
このようなリスクを犯してまで産毛を処理するべきではないとおもいます。
もう一つの理論は、ロングパルスのまま出力をあげるというものです。
産毛といえども、独立したメラニン顆粒よりは、はるかにボリュームがあるはずです。
加えられたエネルギーのすべてが毛の中を素通りして放熱されてしまうわけではありません。
一部は蓄熱されるはずですが、爆発的燃焼がおきるほどではないだけなのです。
ですから素通りする熱量を差し引いても爆発的燃焼がおきるほど強く照射すればよいのです。
そんなことをしたら素通りする熱量でヤケドするのではないですか、という疑問がおわきになっていることでしょう。
そのとおりです。でも、ヤケドしないように冷やしながら照射したらどうでしょう。
コヒレント社のLightSheerには照射口に水冷式の冷却装置が組み込まれており、
その冷却装置を皮膚に押し当てながら照射しますので他社機よりもはるかに高出力で照射することができます。
レーザーエネルギーの強さは、「J/cm2」という単位で表します。
一般的にワキの太い毛根が爆発的燃焼をおこすには14 J/cm2の出力が必要です。
サイノシュア社のLPIRでは、1000分の20秒間に1cm2あたり14ジュールの熱が皮膚の表面に与えられるということになります。
(ジュールというのは熱量の単位で、1リットルの水の温度を1℃あげるのに必要な熱量は約1000calですが、ジュールで表せば4190ジュールです)
実際に脱毛する場合には、最初は太い毛が多いので14 J/cm2くらいからスタートし、回数を重ねるたびに毛の量は減り、
細くなっていきますので出力をあげていきます。
皮膚の色にもよりますが18 J/cm2くらいまで達して数回照射すると太い毛はなくなり産毛だけになってレーザーに反応しなくなります。
冷却装置のないLPIRでは、よく冷やした冷却用のジェルを塗ったうえで照射しますが、色の白い人でも20 J/cm2が限界です。
照射するたびに冷風がでる機械がオプションで使用できます。
それを併用すれば数ジュール強く照射できますが、それでも空冷式であるために25 J/cm2は絶対に不可能です。
その強さで生き残った産毛はあきらめていただくことになります。(機械自体は最高30 J/cm2まで出せる性能があります)
水冷式の冷却装置が内蔵されたLightSheerでは更に高出力の照射が可能です。
ほとんどの人は40 J/cm2くらいで照射しても皮膚にはなんの変化も現れません。
40 J/cm2くらいになってはじめて反応する産毛もたくさんありますので、面白いくらい産毛が処理できます。
(この人のように55 J/cm2という超高出力を要する場合も、
希にはあります)
アレキサンドライトレーザーがダイオードレーザーより劣っているのではありません。内蔵された水冷式の冷却装置の有無の差なのです。 アレキサンドライトレーザーに水冷式の冷却装置が付けば同じように産毛にも効果がでるとおもいます。メーカーの努力を願ってやみません。
補足:ここでは非常に細い毛に対して「産毛」という言葉を使いましたが、医学的には「軟毛」といいます。 「産毛」というのは生まれたばかりの赤ちゃんに生えている体毛のことで、大人に生えている毛はどんなに細くても産毛とは言いません。 でも、「軟毛」という言葉は一般には馴染みがありませんよね。だから、しかたなく「産毛」と書きました。
2000年4月23日
高橋知之 記
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