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目次

レーザー脱毛の原理

太陽光は紫外線・可視光線・赤外線の集まったもので白色光(無色)ですが、黒い服を着ると、白い服にくらべて熱を吸収しやすく暖かいということで分かるように、 黒い色素は白色光を吸収しやすいという性質があります。 このようなブロードバンドな光から、ある特定の波長だけをとりだしたのがレーザー光線です。


人体にはメラニン顆粒として黒い色素が存在しますが、右下がりの黒い線はメラニンの吸収曲線です。 ある特定の波長ということではなく、どの波長であってもメラニンへは吸収されるということを示しています。
このような光線を大量に皮膚に照射すれば、光線は皮膚表面を貫いて、皮膚の中で斜めに横たわっている毛根にあたり、毛根は高温となります。 毛根が高温となれば、それに接触している毛包も高温になります。
レーザー脱毛のターゲットは毛包の中ほどから少し浅いところにある膨大部と呼ばれる部分 (あるいは、それより浅いところにある皮脂腺開口部のすぐ下の峡部毛鞘と呼ばれる部分)です。 そこに毛の再生工場である幹細胞があるといわれています。この幹細胞を熱変性させようというものです。 詳しくはこちらを御覧ください。

なお、幹細胞を破壊すると表現する人がいますが間違いで、破壊ではなく変性です。熱変性とは、例えば生卵を茹でると白身や黄身が固まるような変化をいいます。 ヒヨコは生卵から生まれますが、けっして茹で卵からは生まれません。同じく熱変性した幹細胞から毛は育たないのです。 レーザー光線を照射すると、エネルギーは毛根のメラニンに吸収されて高熱になり、 毛根に接触している幹細胞が2次的に火傷(ヤケド)して熱変性するというのがレーザー脱毛です。 細胞自体がなくなるわけではありません。
身体には毛根だけでなく皮膚表面にもメラニンは存在します。色黒の人の皮膚には色白の人よりも多くのメラニンが存在します。 皮膚表面のメラニンを燃やさずに、毛根だけを選択的に燃やす方法がレーザー脱毛の原理といえます。
皮膚表面のメラニンを燃やさずに、毛根だけを選択的に燃やす条件を説明していきましょう。

波長

ある特定の波長ということではなく、どの波長でもメラニンへは吸収されますが、図では、340ナノメートルの波長では縦軸の吸収度は100くらいですが、 800ナノメートルでは10以下です。このように波長が短くなるほどメラニンへの吸収度がよいという特徴があります。
しかし、レーザー脱毛の場合は、吸収度がよすぎると照射されたエネルギーの大半が皮膚の浅いところで吸収されてしまうために肝心の毛根に届きにくく、 皮膚の浅いところで吸収されたエネルギーは火傷(ヤケド)の原因となります。 また、600ナノメートルくらいより短い波長の光線は、上図の赤線ですが、赤い色素(赤血球のヘモグロビン)にも吸収されるのでエネルギーが無駄になってしまいます。 無駄になってしまうだけではなく、場合によっては赤血球を破壊してしまうこともあるかもしれません。
従って、脱毛に適した波長は700ナノメートルよりも長い波長であるといえます。
最初に登場したレーザー脱毛機は690ナノメートルのルビーレーザーでした。 次に、755ナノメートルのアレキサンドライトレーザー、1064ナノメートルという長い波長をもつヤグレーザー(Nd:YAG)ができました。 そして最後に800ナノメートルのダイオードレーザーがでました。 (レーザーではありませんがIPLと呼ばれる光脱毛機もあります)
波長が長くなると火傷(ヤケド)をおこさずに毛根まで到達しやすく、よって脱毛効果が大きいかというと実はそうでもないのです。
ヤグレーザーが脱毛に不向きな理由は二つあります。一つは、すでに述べているようにメラニンへの吸収度です。 波長が長くなれば皮膚表面に吸収されずに安全ではありますが、メラニンへの吸収度そのものが格段に弱くなってしまうのです。 上の図をみるとヤグロングタイプのメラニンへの吸収度は700ナノメートルでの10分の1程度です。この差は大きいといわざるを得ません。 波長の違いによる吸収差はレーザー出力を御覧ください。

身体には水があるというこのが、もう一つの不向きな理由です。レーザーはメラニンだけでなく水にも吸収されます。 毛根は皮膚(真皮=大量の水)に取り囲まれているわけですから、皮膚の中の水には吸収されないほうがよいのです。
上の図を見れば940ナノメートルくらいから長い波長の光線は急激に水に吸収されやすくなるのが分かります。 1064ナノメートルのヤグレーザーは、いわば、みずみずしくシットリした肌の人の脱毛は不得意なのです。 ヤグレーザーは波長が長いので深部まで届くと発言する専門家もいますが、水分吸収のことを忘れているとしかおもえません。
ちょっとした実験をお目にかけましょう。
800ナノメートルと1064ナノメートルという波長の違いで水分吸収がどう違うかを実験するには、 スポットの大きさや出力などの他の条件を揃えなければ意味がありませんが、現実にそのような機械は存在しません。 そこで、少し波長は異なりますが別の機械で実験してみました。


この機械は外科出力や歯科手術用に私が開発したダイオードレーザーで、810ナノメートルと980ナノメートルの2種類あります。

波長が異なるだけで、他は全く同じですから実験にもってこいです。
上の図で810ナノメートルは水分吸収が悪くて、980ナノメートルはよいことが分かります。 980ナノメートルは1064ナノメートルよりも水分に吸収されやすいこともお分かりいただけるはずです。
厚さ約1mmのハムにレーザーを照射してみました。 こちらが実験の様子です。 (実験を行なっているのは歯科レーザー学に詳しい神谷誠先生です)
810ナノメートルの方は、レーザーエネルギーはハムを通り抜けて裏側にまで達しましたが、 980ナノメートルの方はハムの水分に吸収されてしまって裏側には届きませんでした。 レーザー脱毛では水に吸収されない波長を使用すべきですから950ナノメートルよりも長い波長のレーザーは適当ではないのです。
結論として、脱毛に適した波長は700~900ナノメートルであるといえます。

ちなみに、この二つの機械を用いると、波長による黒色素への吸収差も簡単にビジュアル化することができます。 波長以外は全て同じ設定にしてハムと同様に黒い紙にレーザーを照射してみました。
こちらです。 波長以外は全く同じ条件で黒い紙にレーザーを照射してみましたが、810ナノメートルの方が早く煙がでてくる様子が御覧いただけます。
私の結論は、脱毛に適した波長は700~900ナノメートルであるということなのですが、 しかし、最初に登場した690のルビーレーザーは火傷(ヤケド)が多かったのですぐに廃れてしまいました。 レーザー脱毛が本格的に行われるようになったのは2番目にでたアレキサンドレーザーからです。 690で火傷(ヤケド)しやすく、755で火傷(ヤケド)しにくくなったのは、すでに説明しましたように短い波長は長い波長よりもメラニンへの吸収がよいからです。
当時のルビーレーザーもアレキサンドライトレーザーも、今現在では常識である皮膚冷却装置を備えていませんでした。 冷却装置が内蔵されていない機械でも755ナノメートルでなら実用化できたということです。
皮膚火傷(ヤケド)さえ防げるのであれば、レーザー脱毛に使用する波長は、700~900ナノメートルの間でも、とりわけ700ナノメートルがベストといえます。 なぜならば、最も黒に反応して、最も赤血球にも水にも反応しない波長だからです。

パルス幅(光線1発の持続時間)

700~900ナノメートルくらいの波長のレーザーを皮膚に向けてゆっくりと時間をかけて照射した場合、 まず、エネルギーはメラニン顆粒に吸収されて、顆粒の温度が上昇し、顆粒が存在しない場所の温度は上昇しません。 そして、あるところまで顆粒の温度が上昇すると、その熱はメラニン顆粒に接触している周辺部に伝わりはじめます。 個々の顆粒は小さく、皮膚表面に満遍なく散在しているので、結果として照射した範囲の皮膚温は均等に上昇していきます。
では、個々の顆粒が放熱できる以上に大量のエネルギーを非常に短い時間で与えるとどうなるのでしょうか。
大量のエネルギーを吸収したメラニン顆粒は急速に温度が上昇します。 周囲に放熱する時間的余裕もなく、更に大量のエネルギーが与えられると顆粒は爆発的に燃え尽きてしまうでしょう。 顆粒に接していた部分は爆発のあおりをくらって火傷(ヤケド)がおきます。 メラニン顆粒は皮膚の表面に満遍なく存在しますから、結局ヤケドも満遍なくおきてしまいます。
レーザー1発の持続時間が短いと皮膚に火傷(ヤケド)がおきるということです。 火傷(ヤケド)をおこさないためには1000分の10秒(10ミリ秒、10ミリセカンド)以上の持続時間が必要とされています。
1000分の10秒以上かけてレーザーを照射すルと、皮膚に散在したメラニン顆粒に流れたエネルギーは皮膚に放熱されて火傷(ヤケド)しません。

ところで、毛は皮膚の中にある部分(毛根)と外にでている部分(毛幹)があります。脱毛する際には皮膚の外にでている毛幹を剃り落として、毛根だけの状態で行ないます。
毛根には大量のメラニン顆粒を含んでいます。密集していますのでレーザー照射で大量の熱が発生しても、熱の逃げ場がありません。 もっと大量のエネルギーをあびせると毛根は爆発的に燃え尽きてしまいます。毛根を包んでいる毛包は、あおりをくって火傷(ヤケド)します。 毛包が火傷(ヤケド)すると毛の再生工場である幹細胞が障害を受けると毛が生えなくなるというわけです。これを熱緩和時間理論といいます。
レーザー脱毛の世界では1000分の10秒以上の持続時間をロングパルスと呼んでおり、 我が国で一番普及しているコヒレント社のダイオードレーザーLightSheerは1000分の30秒です。(1000分の100秒という設定もできます)
ルビーレーザーについで登場したサイノシュア社のアレキサンドライトレーザーでLPIRという機種は1000分の20秒、SuperLPIRという機種は 1000分の40秒に設定されていました。 なお、その後に登場したキャンデラ社のアレキサンドライトレーザーは1000分の3秒しかないのロングパルスと称しています。 これは、この機械が色素性病変治療用として輸入されているにもかかわらず目的外の脱毛に転用したために生じた混乱です。 色素性病変治療の世界では1000分の3秒はロングパルスといっても間違いではないのです。 詳しくはこちらを御覧ください。

レーザー脱毛の原理のまとめ

700~900ナノメートルの波長の光線を、適度の出力で、 毛を剃り落として皮膚の中だけに毛が存在する状態で、1000分の10秒以上連続して照射すると、 皮膚に火傷(ヤケド)をおこさずに毛包にある毛の再生工場である幹細胞が熱変性をおこして永久的に無毛の状態が維持できます。
(この条件を満たしていない機械は、いわゆる永久脱毛ができないということになります)

2000年4月23日
2001年6月10日(一部、加筆)
2003年8月13日(一部、加筆)
2006年2月18日(一部、加筆)

ここで書いた内容は光脱毛にも共通したことです。 また、このページは原理のみを書いており、実際の施術には皮膚の火傷(ヤケド)対策が必須です。 火傷(ヤケド)対策とは具体的に冷却装置の搭載ですが、 2004年の夏に東京都がだした安全基準では、 皮膚冷却装置の搭載をはっきりと求めています。 それくらい重要なわけで、私が最初に導入したアレキサンドライトレーザーは脱毛の原理は踏まえていますが、 冷却装置がないために実際に使用できなくなったわけです。

渋谷高橋医院をはじめとする関連医院や脱毛・レーザー脱毛の永久保証ドクタータカハシでは、冷却装置が搭載された機械しか使用しておりません。

2006年7月29日
渋谷高橋医院 院長
高橋知之 記
(本文をコピーされる場合、引用される場合は必ず御連絡ください)




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