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レーザーのスポットサイズと脱毛効果

2001年5月5日の脱毛通信でお伝えましたように、
「いままで永久脱毛できる条件として波長・パルス幅・出力の3項目が大切であると述べてきましたが、 極端に小さなスポットは3項目が満たされていても永久脱毛できないことに気づきました」という私の話に対して、 「ジェントレース」という機械を販売しているキャンデラという会社の森社長より 「渋谷の高橋先生はこんなことも知らずにいままでやっていたとは驚きです」というメールをいただいてしまいました。

そこで少し勉強してみて分かったことを報告させていただきます。(森社長、間違っていたら御指摘ください)
レーザー1発が皮膚をカバーする面積を「スポットサイズ」といいます。
スポットサイズが大きければ同じ面積なら短時間で処理できるわけです。 日本におけるレーザー脱毛は、ロングパルスアレキサンドライトレーザーであるサイノシュア社のLPIRという機械とともに1997年の春からスタートしました。 私も少し遅れて同年9月に第1号機を導入しました。
この機械には直径10mmと7mmのスポットサイズのハンドピースがついていました。(その後アップグレードしたSuperLPIRには12mmも加わりました)
スポットサイズは大きければ大きいほど効率的ですが、面積が2倍になっても同じ出力をだすには機械のパワーも2倍必要であることは誰にも分かることです。 大きなパワーの機械であれば大きなスポットサイズを確保できます。
パワーがないのに大きなスポットを求めれば、永久脱毛ができるだけのエネルギーを毛根に与えることができなくなります。 例えば、パロマー社のSLP1000という脱毛機は90ワットという低パワーです。 この機械を取り扱っているエムアンドエムの富士社長は、 8mmのハンドピースで脱毛できたので安心して予備調査もおこなわずに12mmに変更して失敗してしまいました。 (動物実験からやり直しらしいです)
直径12mmの円は8mmの円に比べて面積は2.25倍あるのですから、同じ結果をだすにはパワーも2.25倍の200ワットに上げる必要があったのです。 (小さなエンジンの軽自動車がきちんと高速道路を走行できるのは車体が軽くて小さいからなのです。 クラウンに軽のエンジンを載せても上手くいくわけがありません)
身の丈をわきまえて、小さなパワーの機械は小さなスポットを選ぶべきでしょう。とはいっても、無制限に小さくできるものではありません。 休止期の毛嚢から伸びてくる新たな毛は「幹細胞」という細胞から生まれるといわれています。 発毛の源である幹細胞がどこにあるのかは未だ不明です。 別頁で述べたように毛嚢の浅いところにある 「峡部毛鞘」またはバルジと呼ばれる「膨大部」付近であるという説が正しいと私は感じています。 それであっても、毛嚢の大きさは毛の成長とともに変化しますから、皮膚の外から位置を同定することは不可能です。


この写真は男性のヒゲにレーザーを照射して、ピンセットで引っ張ってスルリと抜けてきた毛根です。写真の青線を皮膚の表面だと考えてみてください。 毛は皮膚に対して垂直にではなく、少し斜めに生えていますので、そのように並べてみました。 (傾斜角は部位によって違うのはお分かりでしょう。ヒゲだともう少し垂直かもしれませんね)
この毛根を包んでいる毛嚢のどこに発毛の源があるかを皮膚面から同定できないのであれば、 最小限のレーザースポットは一つの毛嚢をカバーする大きさ(写真のa~d)だといえるのではないでしょうか。 そしてその大きさはおおよそ2mmくらいのようです。


この写真は家庭用脱毛機として販売されている「ハンディレーザー」の 検証ページからのコピーです。 仮に機械から出るレーザー光線のスペックが脱毛可能なものであったとしても0.5mmのスポットサイズでは「発毛の源」に的中するわけがありません。
ということで、永久脱毛できる最小限のスポットサイズは2mmということがわかりました。

話を続けます。
90ワットのSLP1000の場合、12mmのスポットではパワー不足のために脱毛できなかったのですが、富士社長の話では8mmだと脱毛できるそうです。 (ワキなどの一部の太い毛は脱毛できるかもしれませんが、ちょっと細くなると無理ではないかというのが私の個人的意見です。 それを検証することで合意していたのですが、なぜか突然キャンセルされてしまいました。 こちらの2001年3月18日の記事を御覧ください)
90ワット・8mmスポットで脱毛できるというのが本当だとすると、直径2mmの円の面積は8mmの円の16分の1しかありません。 すなわち、5.65ワットのパワーがあれば、1本づつなら脱毛できるのでしょうか? (2mm以下のスポットでは脱毛できないことは既に述べましたが、 もっともポピュラーな家庭用脱毛機であるデピレーザーのスポット面積は0.0006948cm2、出力は0.57ワットですから、 直径2mmのスポットに換算すると25.76ワットとなり、SLP1000は、単位面積換算では、家庭用脱毛機の22%のパワーしかないともいえます。 それで脱毛できるのでしょうか?)

実際のところ、2mmのスポットサイズで脱毛できる最少出力とはいくらくらいなのでしょうか?
スポットサイズを小さくしたら、どのようなことが起きるのかを勉強しました。


これはDr.Klavuhnの論文から拝借した表です。
説明しますと、無限に大きなスポット(無限に大きいのをスポットというのもおかしいですけど・・・)を「1」とします。
直径10mmのスポットではスポットの周囲ではレーザー光の拡散などによって、皮膚面から2mmの深さでは0.8倍にしか減弱しませんが、 直径5mmになれば0.52倍に減弱するということを示しています。 すなわち、同じエネルギーを得るためには直径が半分になれば1.54(0.80/0.52)倍に出力を上げなくてはならないという計算です。 皮下3mmの深さでは1.96(0.725/0.370)倍の出力が必要になります。
皮下2mmと3mmにこだわる理由ですが、私たちが使っているLightSheerという脱毛機は皮膚を圧迫しながら照射するのが特徴です。

圧迫すると毛根は皮膚表面に近づきますので2mmも届けば、大多数において、発毛の源である毛嚢膨大部は十分に破壊できます。 一方、アレキサンドライトレーザーのような非接触式の脱毛機では毛根は斜めに立っていますから 太くてしっかりした毛だと3mmでは膨大部には届かない可能性もないことはないですが、考察の際の目安にはなるからです。
お断りしますが、これはあくまでも計算上のことです。計算上と実際は同じでないことはよくあることです。

実験してみました。 私たちが使用しているダイオードレーザーの照射スポットは9mm×9mmです。 左のようにアルミフォイルに4mm×4mmの孔をあけて、これを通して照射してみたのです。


上の横一列が9mm×9mmのスポットで、下の横ニ列が4mm×4mmのスポットです。
9mm×9mmでは30 Jくらいから、4mm×4mmでは40 Jくらいから反応してります。


9mm×9mmでは29 Jで反応(燃えた毛根が見える)していますが、4mm×4mmでは38 Jくらいから反応しています。

確かにスポットが半分になると出力を上げなくてはならないようです。(計算ほども上げなくてもよい?)
家庭用脱毛機の多くはダイオードを発振源として採用していますので波長に関しては問題ないのですが、スポットサイズが1mmもありませんから論外です。 では、もう少しスポットサイズが大きなダイオードを検証してみましょう。
時々ですが、エステで使用されているダイオードレーザーに関する問合わせがあります。 例えば、家庭用のCCDカメラつき脱毛機で紹介した 「モアフラッシュ」に業務用機種があります。 カイザー・レジーナ・プロと3種類あります。性能比較表を見ると、レジーナとプロは家庭用と同じくCCDカメラで拡大しながらピンポイント式に照射をするようです。 ピンポイントといっても「プロ」ではスポット径は3mm、パルス幅の概念も登場しています。 しかしながら、問題の出力は「プロ」でパルス幅が50ミリ秒のときに8.5 J/cm2で、 4mmスポットの「レジーナ」では6.4 J/cm2しかありません。 上記の実験で、4mmスポットでは40 J/cm2近い出力が必要でしたから、あまりに弱いといわざるをえません。
上級機の「カイザー」の場合はスポットは8mmで、パルス幅を450ミリ秒に設定すると出力は43 J/cm2だそうです。 これはダイオード対決でとりあげたSLP1000よりも強い数値です。 (冷却装置がないのでものすごく痛いはずです)
このような機械を使って、がんばって永久脱毛しようとすれば誰が操作してもヤケドするとおもいます。
HPによると、このダイオード機は500店舗以上のエステに導入されているとのことです。 効果がなければ無意味なだけですが、そのうえにヤケドすれば非常に問題です。 一般的にいえば、エステではヤケドしないことをファーストチョイスとする傾向にあります。 その点ではレーザー脱毛の原理で説明したようにヤグレーザーのほうが安全です。 エステでヤグレーザーが普及しているのはそれなりに理屈があるわけです。

ところが、実際に使用されているヤグレーザーのスポットサイズは小さなものが多いようです。
例えばこのロングパルスヤグレーザーのスポットサイズは2mm~6mmです。 皮下3mmの深さのレベルでいえば、2mmのスポットでは10mmのスポットのものに比べて同じ効果を出すには計算上は単位面積あたり8(0.725/0.09)倍の出力が必要です。 カタログスペックでは最大出力が200 J/cm2ですから10mmスポットに換算すると25 J/cm2となります。 一聞すると十分な値のようですが、別頁で述べたように ヤグレーザーでは黒い色素への吸収度は約4~5分の1に落ちるので実際にはアレキサンドライトの7 J/cm2くらいと予想されます。 とても脱毛できる数値ではありません。

ということで、エムアンドエム・森社長の知識にやっとたどりつきました。
ところで森社長が取り扱っているGentleLASEのスポットサイズはHPによると8mm~18mmから選べるそうです。 8mmスポットの最高出力は100 J/cm2、12mmスポットは40 J/cm2ですから 10mmスポットでは(なぜか記載がありませんが)60 J/cm2程度と想像されます。 1000分の3秒という短いパルス幅での経験が私にはありませんが 10mmスポットで60 J/cm2というのは十分なパワーがあるようにおもわれます。
ところで、この機械はオプションとして3mm×10mmという細長いハンドピースが選べます。 その場合の最大出力は100 J/cm2ということですが、 スポットサイズが小さくなれば同じ効果を得るためには単位面積あたりの出力をあげなければならないわけです。 この場合、短径で規定されるでしょうからDr.Klavuhnの表から計算しますと皮下3mmのレベルで4.3(0.725/0.17)倍となります。 すなわち、直径10mmのハンドピースに換算する と23 J/cm2までしかでないことになってしまいます。 わざわざこのような変形した能力の劣るハンドピースを、なぜ、有料オプションとしてつけているのか理解に苦しみます。 (円形のスポットが不都合なら冒頭でお示ししたようにアルミフォイルを使えばタダです) またまた、「そんなことも知らないで・・・」といわれてしまいそうです・・・・。

2001年6月14日
渋谷高橋医院 院長
高橋知之




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