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パルス幅とレーザー出力

レーザー光線1発の持続時間をパルス幅といいます。パルス幅が短いほど細い毛にも効果があるかわりに、皮膚自体の火傷(ヤケド)が起きやすくなります。
学問的には別項で述べたように、 1000分の10秒(10ミリ秒)~1000分の50秒(50ミリ秒)の間でパルス幅を設定すると安全に脱毛をおこなうことができるとされています。
パルス幅が短くなると皮膚そのものの火傷(ヤケド)が起きやすくなります。 長くなると火傷(ヤケド)が起きにくくなるので色黒の人にも照射可能となりますが、細い毛には反応しなくなります。

そのような事情から、コヒレント社のダイオードレーザー(LightSheer)のパルス幅は30ミリ秒に設定されているのですが、 さらに色の黒い人にも対応できるように、最新の機種では100ミリ秒も選択できるようになりました。
またパロマー社のダイオードレーザー(SLP1000)では通常200~300ミリ秒で照射するように設計されているそうです。 (SLP1000という名前は1000ミリ秒まで可能なSuper-Long-Pulseに由来しています)
今、専門家の間では、この100ミリ秒が良いのか、さらに長いSLP1000が良いのか、ホットな話題です。

LightSheer-XCとSLP1000では機械の出せるパワーが異なります(前者の最大パワーは2900W、後者は90Wです)ので、 脱毛効果の優劣がパルス幅の優劣とはなりません。
学問的な興味から、すこし実験をしてみました。

Case 1


ヒザ下です。青枠の中の上段を御覧ください。パルス幅を30ミリ秒に設定して18・19・20ジュールの3段階で各1発づつテスト照射しました。
下段は100ミリ秒に設定して18~24ジュールまでテスト照射しました。
照射から15分後に撮影したのですが、30ミリ秒では18ジュールでも反応していますが、100ミリ秒では18~21ジュールで反応せず、22ジュールから反応しています。
脱毛の効果から見ると、30ミリ秒の18ジュール=100ミリ秒の22ジュールということです。

Case 2


同じくヒザ下です。上段はパルス幅を30ミリ秒に設定して18・19・20ジュールの3段階で各1発づつテスト照射しました。
下段は100ミリ秒に設定して18~23ジュールまでテスト照射しました。
照射から15分後の写真です。30ミリ秒では18ジュールでも反応しています。Case1に比べて毛根周囲の発赤がより強くでています。 良好な効果が期待できます。一方、100ミリ秒では18~23ジュールすべてに反応しているような、していないような、あやふやな結果です。

Case 3


同じくヒザ下で、上段はパルス幅30ミリ秒で16・17・18ジュールです。
下段は100ミリ秒で16~22ジュールです。
照射から15分後の写真です。30ミリ秒では16ジュールでも毛根周囲に発赤があり、きちんと反応しています。 100ミリ秒でも16ジュールから発赤が認められますが、毛根周囲に限局せず発赤の範囲が広いことがわかります。

Case 4


同じくヒザ下で、上段はパルス幅30ミリ秒で45~49ジュールです。
下段は100ミリ秒で50~55ジュールです。
照射から15分後の写真です。 このように高出力で照射する対象は「産毛」のような細い毛ですから、有効であっても、太い毛の場合にみられるような毛根周囲の発赤膨隆は認められないのが普通です。 さて、30ミリ秒では45ジュールでも皮膚の発赤膨隆が認められます。 44ジュール以下で照射していませんから不明ですが、もっと弱い出力でも反応するかもしれません。
100ミリ秒の場合には50ジュールでは反応がみられません。51ジュールから反応しています。

Case 5


同じくヒザ下です。
上段はパルス幅30ミリ秒で18・19・20ジュールです。ピントは合っているのに写真の出来がよくありません。 しかしながら18ジュールでも反応しています。
下段の100ミリ秒では19・20ジュールでは反応せず、21ジュール~反応しています。

考察

脱毛専門医の間では、ロングパルスからスーパーロングパルスへと向かう風潮があります。 私も半年前、100ミリ秒の機械を導入した頃はそのように感じていました。しかしながら、結果はお示ししたとおりです。 同じジュール値では30ミリ秒の方の効果が大です。100ミリ秒で同じ効果を得るには、20%以上の強さで照射する必要があるようです。
100ミリ秒の利点は「皮膚の黒い人にも使用できる」ことにあります。 同じ出力で同じ効果であれば、理論的に皮膚障害の少ない100msが良いのでしょうが、より高い出力を必要とするのであれば安全度は下がるとも考えられます。 難しいところです・・・。
30ミリ秒で照射すると火傷(ヤケド)する人に100ミリ秒で照射すると本当に火傷(ヤケド)しないのでしょうか?
私たちJPSのクリニックでは100ミリ秒の機械があるにもかかわらず、30ミリ秒を標準設定として採用しています。 たくさんの人を処理していますから、ときどき火傷(ヤケド)は発生しています。
ロングパルスアレキサンドライトの時代は結構な頻度でしたが、コヒレント社のダイオードにかえてからは、昨年の渋谷でいえば1000人に3~4人といったところでした。 そして、試行錯誤の後にたどりついた照射マニュアル (基本手技) を徹底的に実践するようになった2000年5月以降では、私の記憶では渋谷・池袋合わせて5人にしか発生しておりません。


すべてが、この例のように、ヒジ周囲などの皮膚に起伏があるために照射口を密着させることが困難であったケースです。 その間の処置数は1万人くらいですから、相当に良い成績といえます。そして、それらは1月以内になんの治療もおこなうことなく自然消失しました。
主張したいことは(コヒレント社のダイオードに限って言えばですが)、 「皮膚が黒いために火傷(ヤケド)するのではなく、基本手技から逸脱して火傷(ヤケド)するのである」ということです。
「基本手技」の骨子は、3つです。照射口を拭いて「燃えかす」を除く、粘度の高いジェルをたっぷりつけて、ハンドピースを強く押しつける、ことです。


「押す・拭く・ジェル」
他社の機械に慣れた人にコヒレント社のダイオードを操作させると殆どの人は左のような姿勢をとります。 まったくの新人でも同様です。そうすると、照射口が皮膚から浮きやすく火傷(ヤケド)を起こしやすくなります。 また、ハンドピースを的確に移動できずに照射もれを起こしやすくなります。
コヒレント社のダイオードの欠点はハンドピースが大きくて重いことと言われています。 私も最初はそのように考えておりましたが、 今は重いことは欠点ではなく長所であると考えております。 右のようにハンドピースの背中に片手を置いて前かがみになって処置をするのです。 ハンドピースの重量が加わって、僅かな力で強い圧迫が得られます。
このように操作するとハンドピースの重さが苦になりません。 また、操作中は照射口を拭くためのテッシュを離してはいけません。
押して、拭いて、ジェルをつける。
「これぞ、安全脱毛の極意だ」とスタッフに言いつづけている昨今です。

「パルス幅とレーザー出力について」というようなタイトルは学会向きですが、 「テッシュペーパーを握りながら処置することの有用性」なんていう演題は受理されないのが医者の世界です。

2000年12月21日
渋谷高橋医院院長
高橋知之記




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