レーザー脱毛の経過観察
フォトフェイシャルのすばらしい点は表皮の浅いところに限局したシミが
このようにポロポロと取れることです。
これはフォトリボーンではできない芸当です。(フォトリボーンは逆に真皮層の深いところに限局した色素沈着に有効です)
でも、ときどき火傷(ヤケド)が起きることがあります。

スタッフどうしで照射練習をしていてこのようなトラブルが発生しました。照射後2日目の写真です。
料金を支払っていただいた有料モニターの方でも火傷(ヤケド)が起きたこともあります。
前回と同様の出力である27
Jで照射した例と26 Jで照射した例です。
このような火傷(ヤケド)の原因ですが、

フォトフェイシャルではこのように光の出口であるガラス面と皮膚の距離を2mmほど離して照射しなければなりません。
実際には、この隙間は

このような粘度の高いジェルで満たされます。ジェルを介してハンドピースの冷却装置に熱は吸収されるということになるわけです。
この仕組みは脱毛の際のジェルと同じ働きであるともいえます。
こちらを御覧ください。
このハンドピースの照射口は8mm×34mmという広いものです。照射口のどの部分でも皮膚面との距離が常に一定であるのが理想です。
というのは、光エネルギーは距離の2乗に反比例して減弱していきますから、設定どおりのエネルギーが身体に伝わらないことになってしまうのです。

皮膚に触れるか触れないかの右端と大きな隙間のある左端では皮膚の反応は全くといってよいほど異なるでしょう。

これくらい極端になると、接触している左端では火傷(ヤケド)が起きるかもしれません。

この機械の照射スイッチはハンドピースのグリップのところについています。
ハンドピース自体は写真のように大きなものですがスイッチを押すためには、どうしてもこのような持ち方になります。
ハンドピースの両端をしっかりと保持できないので不安定になってしまうのです。

不安定な状態でスイッチを押すと照射口が予定したよりも顔に近づいたり、斜めになってしまいがちです。
(実際の照射では顔じゅうジェルだらけにして照射します)そこでメーカーでは「スペーサー」というプラスチックの枠を用意しています。

これを装着すれば照射口と皮膚面の距離は一定に保たれるはずだというアイデアです。

しかしながら、スペーサーを使用しても、このような起伏の大きい場所で距離を一定に保つことは難しいです。

また平らなところであっても、強く押しつければ中央の皮膚はガラス面に接触するくらいに盛りあがってきます。
照射スポットの中央部分で光エネルギーが一番強いはずで、その一番強いところで最短距離になってしまうのです。
(フォトフェイシャルの主なる施術部位は起伏の大きい顔面ですから、実際のところ、このスペーサーはあまり役立ちません。
役立たないので使用していないクリニックのほうが多いのではないかと推測します)
IPLはレーザーと違って拡散する光です。
光の強さは距離の2乗に反比例しますから、数ミリの差はレーザーでは問題ありませんがIPLでは大きな差となります。
同じ出力設定で同じ施術者が行ったとしても、距離は毎回微妙に変わるはずです。それが火傷(ヤケド)の原因なのです。

写真上がいままでのスペーサーです。皮膚の盛りあがりを防止する格子を私はガラス面に取りつけてみました。
格子はgridですからグリッドスペーサーと名前をつけました。

上は普通のスペーサー、下はグリッドスペーサーです。
皮膚の盛りあがりがまったく無くなったのがお分かりになるとおもいます。
押しつけても常に距離は一定に保たれます。
グリッドスペーサーを着ければ押しつけてもかまわないとのではなく、(軽くですが)押しつけながら照射するべきでしょう。
そうすれば常に距離は一定ですから、施術者がベテランであっても新人であっても差はありません。
誰が行っても火傷(ヤケド)するときは火傷(ヤケド)し、しないときは火傷(ヤケド)しないのです。
機械の出力設定が、あるいは機械の性能がダイレクトに結果に反映されるようになるのです。すなわち施術の標準化が可能となるともいえます。
では、このグリッドを取りつけることによる弊害はないのでしょうか。考察してみました。
考えられる不具合は、
1) グリッド部分が熱で壊れないか。
2) グリッド部分の真下にある皮膚の治療効果はどうなるのか。効果がないのではないか。
という2点です。
熱について考えてみます。
レーザー脱毛なり光脱毛なりで、適切な設定がなされて永久脱毛できるだけのエネルギーが毛根に与えられたときには、
太い毛の場合には蛋白質が燃えたときに発する嫌な臭いがしますので相当な高温になっていると想像されます。
実際に何度くらいになるのかとおもって文献を調べたのですが、そのことに言及したもの は見つかりませんでした。
測定する方法がないのでしょう。
グリッドスペーサーはポリカーボネートでできていますが、ポリカーボネートは熱に強い素材です。
150度程度までは変形せずジェル状の流動体になるには260度~320度といわれています。

白い紙の上に数本の毛髪を置いて、その上にジェルをたっぷり

毛髪は激しく燃えて赤矢印の部位でグリッドに燃えかすが付着しました。
ガーゼで一擦り(ひとこすり)すれば取れました。
実際の施術では、このまま次々に照射していけば、燃えかすの下にきた皮膚は火傷(ヤケド)を起こすので必ず拭き取らなければなりません。
(レーザー脱毛の場合に私が「押す・拭く・ジェル」と強調しているのはこのことです)

グリッドスペーサーを水洗いして観察すると、毛髪のあったところに矢印のような変形が認められました。
これは私にとって新しい知見です。
脱毛目的でレーザーやIPLを照射した際には毛根の温度は200度以上に達している可能性が大だということをいうことなのです。
この高温の波及が毛嚢に限局するという理論が「熱緩和時間理論」であり、
「熱緩和時間理論」に基づいたパルス幅(レーザー1発の持続時間)であっても皮膚側の条件では火傷(ヤケド)が起きますので、
その防止のためにジェルや冷却装置が重要であるということを再認識いたしました。
実際のフォトフェイシャル施術にあたっては、対象者の大半は女性ですし、
男性の場合にはヒゲ部分は避けて行ないますのでグリッドスペーサーの変形は起きないとおもいます。
グリッドスペーサーを脱毛に使用する場合でも毛を深剃りして行ないますので、変形はもっと少ないとおもいます。
(もちろん施術にあたっては「押す・拭く・ジェル」と同様な注意が必要です)
私はグリッドスペーサーは衛生上の配慮から施術ごとの使い捨てにすべきだと考えていますので、この程度の変形は容認されると考えます。
(むしろ、変形をきたしたほうが再使用を妨げますので好ましいかもしれません)
以上で、熱に関しての懸念は解消しました。次にグリッドの真下の効果について考えてみます。
使用している光線はレーザーではなくフラッシュランプです。
フラッシュランプはレーザーと違って拡散しますのでグリッドの真下が完全な死角になるともおもえませんし、もともと透明樹脂です。
光は多少の減弱はあるでしょうがグリッドを突き抜けるはずです。グリッド部分の厚みは0.5ミリあります。
グリッドに囲まれた小窓の一辺を5ミリ程度とすれば、グリッドが照射面に占める割合は計算すれば5%くらいになります。
グリッドなしで照射すれば、照射面と皮膚の間が離れすぎる部位の面積は5%以上になると想像されるのですから
(私的には50%くらいが無効な、あるいは効果の乏しい照射となっていても不思議はないとおもっております)、
グリッドの下の皮膚にまったく光が届かないとしても5%ですからそれほど大きな問題ではないとおもいます。
この2点に関しては実際に臨床の場で使用してみて問題ないことを確認できました。
グリッドスペーサーを使うようになって患者さんもスタッフも安心して施術できるようになり、私も枕を高くして眠れるというものです。
グリッドスペーサーは簡単なアイデアではありますが、私の自慢したいアイデアです。
従来のスペーサーを使用しているエステサロンの方と話をしたところ、
「グリッドの中のジェルは入れ代わらないので冷却効果が無くなるのではないですか」という質問を受けました。

グリッドスペーサーの側面には写真のように窓が並んでいます。
この古いジェルはこの窓から「ところてん」式に排出されるように設計したのです。
本当にそのようにうまくいくかどうか設計時点では半信半疑だったのですが、
実際に設計どおりにジェルが排出されるのが確認できたときはとても嬉しかったです。
排出される様子をビデオに撮りましたので御覧ください。こちらです。
そしてこちらはグリッドスペーサーを装着しての施術の様子を撮影した動画です。
ハンドピースを片手で操作でき、鼻の頭であっても確実に2ミリ離すことができますので予想外の火傷(ヤケド)がなくなります。
レーザーやIPLを用いた治療・施術というのは、機械の設定が同じであれば施術者が異なっても同じ結果がでなければいけないと私は考えます。
そのような標準化が実現しなければ普遍的な治療手段にはなりえないでしょう。
名人が行なった場合にしか良い結果がでない治療法を、
手技を習得していない私のような凡人が無思慮で行なうようなことがあればトラブルが頻繁に起きるでしょう。
フォトフェイシャルの問題点に気づいて解決策をおもいつくまでに
1年半もの年月を要してしまいました。
もっと早くおもいつくべきでした。その間に何例かの火傷(ヤケド)を生じせしめたことを、私は深く反省いたします。
顔のシミが気になってフォトフェイシャルを受けて火傷(ヤケド)したのでは本末転倒です。
そのような悲しいアクシデントは私のクリニックでも他のクリニックでも起きてはなりません。
私はこのグリッドスペーサーというアイデアを自分のクリニックだけで独占するつもりはありません。
どの施設にも提供したいと考えています。
フォトフェイシャルを行なっていらっしゃるクリニック関係者の方でグリッドスペーサーに御関心をいただきましたらぜひ私までメールをお送りください。
現在、グリッドスペーサーを使用して施術している施設はこちらです。
また、グリッドスペーサーというアイデアはフォトフェイシャルばかりでなくエステサロンなどで広く行なわれている光脱毛にも応用できるはずですので、
関係者の御意見を伺いながら、御協力をお願いしながら広く普及させたいと考えます。
2003年7月1日
ところで、フォトフェイシャル治療の対象となる色素沈着はソバカスや老人性色素斑で、皮膚の浅いところにあるほど効果が大です。
しかし同じ色素沈着である肝斑では、施術すればするほど悪化することがあります。
肝斑にはどのような対策をとればよいかは
こちらのページで説明していますので御覧ください。

肝斑用640nmフィルター
簡単に言ってしまえば、このフィルターをハンドピースに取り着ければよいということなのですが、
それを着けたとしてもサファイアガラス面と皮膚表面を一定に保つ必要があります。
上記本文で説明したグリッドスペーサーはハンドピースに直接装着するように設計してあるので、この肝斑用フィルターに取り着けることができません。
新たにグリッドスペーサーを設計する必要に迫られたのですが、
こちらのページでお示ししましたようにグリッド部分では火傷(ヤケド)しやすいので改良することにしました。

新設計のスペーサーを取り着けたところです。ガラス面の中央部のグリッドを取り除きましたので、もう「グリッドスペーサー」という言葉は適当ではありません。
ガラス面と皮膚表面の距離はフレームからガラス面に伸びた「足」の突起部分で6×6mmに保たれます。
「ポイント・スペーサー」とでも呼ぶべきでしょうか・・・。
ところで、フォトフェイシャルのハンドピースのガラスはサファイガラスではなく、

クリスタルガラスなので、このように壊れやすいという欠点があります。
肝斑用フィルターは耐熱性のある硬質サファイアガラスなので、このように壊れることはまずありません。

それならばと、フィルターではない普通のサファイアガラスを組み込めば
クリスタルガラスの保護にもなって新しいスペーサーも取り着けることができるとおもいたちました。
写真は装着しているところです。
フォトフェイシャルというのは施術方法に対する名前で、
機械はカンタム(Quantum)あるいはナチュライト(NatuLight)といいますが、
これからはこれらの機械でもP-NAINと同様に再現性をもった施術がテキパキとできるようになりました。
2005年5月14日
文責者:渋谷高橋医院 院長 高橋知之 (E-mail: Tomoyuki@Takahashi.MD)
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