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  3. P-NAINはどこを攻撃しているのか(1)

はじめに

御存じのように医療機関だけでなく、たくさんのエステサロンでレーザー脱毛や光脱毛が行なわれています。
エステサロンでの脱毛でヤケドして、その補償交渉がうまくいかなかった場合に被害者は医師法違反であると訴えたケースが何件かあります。
訴えを受けて警察はその行為が医師法違反であるかどうかの見解を厚生労働省に求め、それに対して厚生労働省は2回にわたって課長通知をだしました。
最初の通知は平成12年5月18日で、 こちらです。 要約すると「レーザー熱を毛根部分に照射し、毛乳頭や皮脂腺開口部等を破壊して脱毛する行為を医師でない者が行なえば医師法違反である」というものです。
この通知がでた後、レーザーを使わなければ大丈夫と考える業者が増えてレーザー脱毛機はエステの世界からほぼ消滅して光脱毛機に置き換わってしまいました。 でも光脱毛機であっても設定条件と肌質によってはヤケドします。レーザー脱毛機と光脱毛機は本質的には同じなのですから当然です。
そこで厚生労働省は平成13年11月8日に2回目の通知をだしました。 こちらです。 「用いる機器が医療用であるか否かを問わず、レーザー光線又はその他の強力なエネルギーを有する光線を毛根部分に照射し、毛乳頭、皮脂腺開口部等を破壊する行為」 と適用を拡げての更に明確なものです。

これらの課長通知を受けてエステ業界では、毛乳頭や皮脂腺開口部等を破壊しない程度の弱いエネルギーで照射するようになり、 永久脱毛という言葉は広告から消えてしまいました。
しかし消費者は派手な広告をみて永久脱毛であると誤解して施術を受けているのが現実です。 そしてそれでも、そのような弱い出力でもときどきヤケドは起きているのも現実です。

消費者はエステに永久脱毛を求めています。
しかし、厚生労働省は毛乳頭や皮脂腺開口部等を破壊する脱毛は医師法違反であると言うのです。
医師法17条には「医師でなければ、医業をなしてはならない」と書いてあります。 医業とは「医行為を業とすること」と解され、医行為とは「医師の医学的判断および技術をもってするのでなければ人体に危険を及ぼすおそれのある行為である」 と解されています。
毛乳頭や皮脂腺開口部等を破壊する行為は医師の医学的判断および技術をもってするのでなければ人体に危険を及ぼすおそれのある行為でしょうか?
P-NAIN2&3(以下、P-NAINと略)はヤケドを起こさずに永久脱毛ができます。私達はそれを目的として開発しました。 そしてそれが実現できるかを検証する意味もあって私達は「永久保証のドクタータカハシ」という脱毛サロンを全国展開しております。
P-NAINはテスト照射でヤケドしなければ本番でもヤケドしません。 万一手違いが起きてヤケドさせたとしても、医師の医学的判断および技術がないためにヤケドしたとはどう考えても言えません。
レーザー脱毛の黎明期の機械、たとえばサイノシュア社のアレキサンドライトレーザーは冷却装置が内蔵されていなかったために非常にヤケドしやすい機械でした。 ヤケドを防ぐために皮膚のメラニン量を測る色素計の値を参考にして医師の経験とカンで出力を決めていました。 まさに医師の医学的判断および技術が必要な脱毛機であったと言えます。
私達は医師であってもエステティシャンであっても機械設定が同じであれば結果は同じなのだから、 たとえヤケドさせたとしても医師法違反にはあたらないと考えています。罪科を問うなら業務上過失傷害罪でしょう。
私達はこれが正論であると確信しておりますが厚生労働省課長通知に沿った逮捕者はすでに相当数ありますし、 すべての容疑者が罪を捜査の早い段階で認めていますので、 「レーザー光線又はその他の強力なエネルギーを有する光線を毛根部分に照射し、毛乳頭、皮脂腺開口部等を破壊する行為は医師しか行なってはいけない」 という厚生労働省課長通知が拘束力をもってきております。
こういった背景があって、今は脱毛できないような弱い出力がまかり通っています。 皮膚の中の毛ではなく、皮膚から飛びだしている毛がかろうじて燃えるような弱い出力です。 でもそれは消費者にとっては詐欺のようなものではないでしょうか。 こちらにありますように、 単に効果がないばかりか脱毛をはじめる前よりも毛量が増えてしまうことさえ珍しくないのですから。
P-NAINをマニュアルどおりに使用すればヤケドしません。理論的にはするはずがありません。そして経験的にですが、永久脱毛はできています。
しかし永久脱毛できていても、医師の医学的判断および技術をもってしなくても人体に危険を及ぼすおそれのない行為であっても、今の厚生労働省課長通知では、 毛乳頭や皮脂腺開口部等を破壊していれば、私達が行なっている行為は医師法違反となってしまいます。

そこで、私がP-NAINで行なっている行為が毛乳頭や皮脂腺開口部等を破壊しているのかどうかを確認する必要がでてきました。 P-NAINによる脱毛で毛乳頭や皮脂腺開口部等が破壊されているのであれば、どれほど消費者に貢献していようと、 違法ということになりますので私達は脱毛サロン経営から撤退せざるを得ません。そうなればたくさんのお客様に御迷惑をおかけすることになります。

考察

では長い話になりますが、はじめさせていただきます。

P-NAINはどこを攻撃しているのか

皮膚と毛の構造を少しばかりおさらいしましょう。
皮膚は表皮と真皮に分けられます。 表皮の厚さは0.1~0.2mm、表皮を含めた皮膚全体の厚さは部位によって異なりますが、最も薄いのが瞼や耳で、背中や足の裏は厚いです。
一般に脱毛しようとおもう部位の厚さは2~3mmといったところでしょうか。
したがって、いま問題になっている「皮脂腺開口部」は0.3~0.5mmくらいの深さです。 毛乳頭というのは毛根の一番下の膨らんだ部分(毛球)に飛びだした組織です。 この組織にはメラニンが含まれていませんので、真っ黒の毛球を背景にすると、まるで「ちくび」のように見えるので毛乳頭と呼ばれています。
毛乳頭は皮下組織にありますので、その深さは3mm以下ということも多いはずです。

皮膚表面からレーザー光線なりP-NAINのようなフラッシュ光線を照射すると、光線のエネルギーは黒い毛根に吸収されて、毛根の温度は上昇します。
その温度上昇によって、毛根に接している皮脂腺開口部や毛乳頭が破壊されるか否かを論じようとおもいます。
まず、皮脂腺開口部です。
皮脂腺開口部は皮膚表面から0.3~0.5mmの浅いところにありますから温度は相当に高くなると想像できますが私達の知るかぎり過去に測定した人はいませんし、 私達自身も測定方法をおもいつきません。
それで推論を重ねていくことにします。

ヤケドの重傷度分類は日本熱傷学会の規定を用いるのが一般的で、Ⅰ度~Ⅲ度に分かれています。

Ⅰ度:日焼けなどによる表皮のみの熱傷で、赤くなる程度で治療を要さない。

浅達性Ⅱ度:水疱が形成され、水疱の底の真皮が赤みを帯びて痛みが強く、通常1-2週間で治癒し瘢痕などの後遺症を残すことはない。

深達性Ⅱ度:水疱の底の真皮が白色をしており、知覚が鈍く、治癒までおよそ3-4週間を要し、治癒後は肥厚性瘢痕などの後遺症を残す可能性がある。

Ⅲ度:皮膚が全層に損傷された深い熱傷で知覚がなく、その表面は白色または褐色レザー様となったり皮膚が完全に炭化した熱傷も含む。

皮脂腺開口部が破壊されるには相当なヤケドが起きる必要があります。 重傷度分類にしたがえば、破壊されるほどのヤケド、すなわち深達性Ⅱ度熱傷あるいはⅢ度熱傷が起きればそこには瘢痕が残ります。
この皮脂腺開口部は皮膚表面から0.3~0.5mmの浅いところにありますから、そこでこのような高度なヤケドが起きれば皮膚表面が無傷で済むわけがありません。 皮膚表面には水疱(みずぶくれ)を伴うヤケドが起きるはずです。 逆に言えば、皮膚表面に高度なヤケドが起きれば0.3~0.5mm下にある皮脂腺開口部にもヤケドは及んでおり、皮脂腺開口部とは皮脂の出口なのですから、 そこが破壊されれば瘢痕ができ、瘢痕は開口部の閉塞を引き起こすはずです。
私達が最初に導入した医療用アレキサンドライトレーザー(SuperLPIRサイノシュア製)では、 幸いにして、深達性Ⅱ度熱傷あるいはⅢ度熱傷は経験しませんでしたが、浅達性Ⅱ度熱傷はときどき経験しました。
私達のところでの脱毛症例数は述べ数十万回なのか、数百万回なのか数える気にならない膨大な例数です。 ヤケドなく無事に施術できた人、何十人か何百人かの I度熱傷。そして、初期の頃の少数の浅達性Ⅱ度熱傷。 どの人からも脱毛による乾燥肌の訴えは今もってありません。すなわち、皮脂腺開口部の破壊は起きていないと強く推測できます。

私達のところで、皮脂腺開口部を破壊するおそれのある深達性Ⅱ度熱傷あるいはⅢ度熱傷が起きない理由は簡単です。
それは、冷却装置が内蔵されたハンドピースを用いた機械だからです。 医療用ダイオードレーザー(LightSheerルミナス社製)は皮膚に接触する先端が5℃に設定されていますし、P-NAINはマイナス10℃まで可変できます。
皮膚表面をマイナスにしたハンドピースを接触させれば、0.3~0.5mm下の温度も下がるので深達性Ⅱ度熱傷あるいはⅢ度熱傷は起こりようがないのです。

P-NAINを使えば、たとえ皮膚表面がヤケドしたとしても皮脂腺開口部は破壊されないことが分かっていただけたとおもうのですが、 次は毛乳頭の破壊について考察してみます。
毛乳頭は皮膚表面から3mm以下の深いところにあります。そして毛乳頭そのものにはメラニン色素は存在しません。 この毛乳頭を破壊するには、毛乳頭を包んでいる毛球を破壊しなければなりません。 毛球を破壊することによって毛乳頭を道連れにしなくてはならないのです。
毛乳頭が破壊されたか否かを見極める簡単な方法があります。
私達が最初に導入したアレキサンドライトレーザーは皮膚冷却装置が内蔵されていませんでしたからハンドピースを皮膚に押し当てずに照射していました。 強い出力で照射すると、毛が毛穴から少し飛びだすことがあります。専門医の間ではポップアップ現象と呼ばれています。 飛びだすということは毛球が毛乳頭から離れているということですから毛乳頭は破壊されているとみなすことができます。


これはダイオードレーザーである LightSheerとSLP1000という機械を比較したときのものです。
どちらの機械もハンドピースを皮膚に強く押しつけて施術しますが、左側はLightSheerです。 毛の燃えかすが黒くなって(灰になって)皮膚にこびり付いています。 ポップアップ現象で飛びだした毛の燃えかすがハンドピースで押しつぶされたものです。 毛根が激しく燃えて毛乳頭が毛嚢の底から離れている、すなわち毛乳頭が破壊されているということになります。 右側ではポップアップ現象はみられていません。毛根は形を変えずに、ただ熱くなっただけで、そのために毛穴の周囲が赤くなって腫れています。 右側は確実に脱毛できていますが、左側は赤く膨隆しているところは脱毛できていますが、変化がないところもあって、そこは脱毛できていません。
ポップアップ現象が起きると確実に脱毛できたということで施術者は安心ですが、ぺちゃっとこびり付いたところの皮膚は小範囲ですがヤケドします。
二つの写真の中間のような設定、ポップアップ現象は起きないけれども発赤膨隆は確実に認められるというような設定ができれば理想的な脱毛設定と言えます。


これは、男性ヒゲにレーザーを照射したときの反応(LightSheerの場合) というページの冒頭にある写真で、LightSheerの14 J(ジュール=J/cm2)で照射して15分ほど経った写真です。 赤丸のところは、「ぺちゃっと潰れた燃えかす」が見えます。緑丸のところは照射の勢いでしょうか、「燃えかす」さえ吹き飛んでしまっています。 どう考えても毛乳頭は破壊されているとしか言えません。
なぜ吹き飛んでしまったかは後で説明します。


別の男性の4日後の写真ですが、13 Jという弱い出力(これ以下に設定することはありません)ですが、それでもこのような状態は2週間弱も続きますので、 気の弱い男性だとマスクが手放せません。不精ヒゲのように見えるのは毛球が毛乳頭と離れているためです。すなわち、毛乳頭が破壊されているためです。
ではP-NAINも同じでしょうか。

P-NAINではこのような現象が起きません。

こちらの頁で説明した写真ですが、P-NAIN 15 Jでの照射直後です。 この写真で判るようにポップアップ現象が起きないということは、毛乳頭は毛球の中にあるわけで、すなわち毛乳頭は破壊されていないということになります。
照射に伴う痛みも僅かですしマスクも要りません。このような僅かな変化しか起きないにもかかわらず回数を重ねると着実に減毛していきます。

もう少し考察を続けます。

これは2001年に書いたレーザーのスポットサイズと脱毛効果 と題する考察から抜粋した写真です。
男性のヒゲにダイオードレーザーであるLightSheerで照射して、ポップアップ現象で飛びだした毛の燃えかすをピンセットで引っ張りだしたものです。 一番下の毛球も完全燃焼しているのが分かります。そうすると、毛球に包まれた毛乳頭は破壊されていると考えてよいでしょう。
なお、このようなポップアップ現象が起きるのは太い毛だけで、足や手の細い毛には起こりません。 太い毛であっても出力を下げれば起こりません。そしてポップアップしなくても毛穴の周りさえ発赤すれば脱毛できていきます。 脱毛にポップアップ現象が必須でないのならば、起きないほうがダウンタイムが少なくて好都合という考えもできます。 (ダウンタイムというのはごく普通の日常生活に復帰できるまでの時間のことです)

P-NAINでは太い毛であっても通常はポップアップ現象は起きません。すなわち毛乳頭は破壊されないと推測されるのですが、少し実験を行なってみました。

厚さ1mmの薄切ハムを用意しました。

これは薄切ハムの間に髪の毛を挟んでLightSheerとP-NAINで照射した結果です。 深さ2mmのところでの照射風景はこちらです。
LightSheerでは1mmの深さでは毛は蒸散して消えてしまっています。男性ヒゲで14Jでのテストで毛根が吹き飛んだ理由はこれなのです。 吹き飛んだのではなく蒸散してしまったのです。
2mmの深さのところでも激しく燃えているのが分かります。 これくらい激しく燃えたという結果は先程のヒゲ脱毛の人からピンセットで引き出した毛根の所見と一致します。 やはり、LightSheerでは条件が揃えば毛乳頭は簡単に破壊すると言えます。
一方、P-NAINですが、1mmの深さでは毛は太く変化しています。P-NAINからのエネルギーで温度が上昇して軟らかくなったところを ハンドピースで押えつけられたので潰れたように見えているのでしょう。 2mm以下のところでは全く変化はみられません。したがって、P-NAINでは毛乳頭を破壊することは不可能と言えます。
では、毛乳頭が2mmではなく、1mmのところにあったらP-NAINでも破壊できるでしょうか?
答はノーです。なぜなら、そのように浅い毛根は産毛状の細い毛だからです。 細い毛のメラニン含有量は少ないので、その毛乳頭を破壊するには更なる高出力が必要なのです。 私達の経験を踏まえての想像ですが、おそらく100J以上の出力が必要なのではないかと考えます。
ところで、この実験ではLightSheerは40 J、P-NAINは45 Jで行ないました。
LightSheerの波長は800nm、P-NAINは700nmです。 レーザー脱毛の原理の頁で説明しましたように、 700nmの方が800nmよりもメラニンの吸収度は大きいのですから、LightSheerの方が反応が弱いはずで、 それなのに深くまで入って毛乳頭を破壊するというのが理解しがたいという人もいらっしゃるのではないかとおもいます。
答えは簡単です。
レーザーとフラッシュランプの違いなのです。

レーザーはどこまでも真っ直ぐに進むことが特徴ですが、フラッシュランプは元々拡散光で、 身体に入れば更に拡散して2mmの深さでも毛乳頭を破壊するほどのエネルギーはなくなるということなのです。
LightSheerの温度は5℃で、皮膚表面近くにある皮脂腺開口部附近への冷却効果はあるはずです。 そしてレーザー光線なので直進して毛乳頭周辺にまでエネルギーは届きます。
一方、P-NAINは、たとえば温度をマイナス3℃に設定したとすれば、皮脂腺開口部附近の温度はLightSheerよりも低いはずです。 そして拡散光なので毛乳頭に届く前に減衰してしまうのです。

ここまでの結論です。

1)皮膚を冷却する装置が登載されていないレーザーによる脱毛機でヤケドが起きた場合は皮脂腺開口部を破壊するおそれも、毛乳頭を破壊するおそれも十分にある。

2)皮膚を冷却する装置が登載されていないフラッシュランプによる脱毛機でヤケドが起きた場合は皮脂腺開口部を破壊するおそれがあるが、 毛乳頭を破壊する可能性は極めて低い。

3)皮膚を冷却する装置が登載されているレーザーによる脱毛機でヤケドが起きた場合でも皮脂腺開口部を破壊するおそれはないが、 毛乳頭を破壊するおそれはある。

4)皮膚を冷却する装置が登載されているフラッシュランプによる脱毛機でヤケドが起きた場合でも皮脂腺開口部を破壊するおそれはない、 毛乳頭を破壊するおそれもない。

P- NAINは四番目に該当しますが、実際の施術ではヤケドしないことが明らかな範囲内で数発の異なる出力でのテスト照射を行なって皮膚の反応を観察します。 そして10分後に毛穴の回りが発赤している最低出力で全体照射しますので、理論上はヤケドは起こりえないと言えます。
それでもヤケドが生じたとすれば、考えられる原因は、テストの際には冷却装置が正常に作動していたけれども本番では作動しなかったということです。
実際、LightSheerではそのようなヤケドをときどき経験します。 単発のテスト照射では冷却装置に余裕があるけれども、 連続照射では温度が下がる前に次の照射が行なわれて徐々にハンドピースの温度が上昇して最後にはヤケドしてしまうというわけです。


これはその典型例です。写真の上よりも下の方のヤケドがひどいのは一目瞭然です。機械はLightSheerで上から下の方に連続照射していました。 上の方では冷えていたハンドピースですが下に来るにしたがって温度が上がってヤケドしています。 一番下までくると上に戻るわけですが、その間にハンドピースは十分に冷えてヤケドは少なくなっているのです。 ちなみに、この方でも乾燥肌にはなりませんでした。
P-NAINでは設定した温度に下がらなければハンドピースのスイッチが入りませんからこのようなヤケドも起こりようがありません。
ですからP-NAINに関しては、「マニュアルにしたがって正しく操作するかぎり、 毛乳頭や皮脂腺開口部等を破壊するおそれはないし皮膚のヤケドが起きるおそれもない」と言えます。

そうすると、ここまで読んでいただいた皆様の多くは、 「毛乳頭や皮脂腺開口部等を破壊しない出力でどうして脱毛できるのですか?」という疑問がお沸きになられたことでしょう。
では引き続き、その疑問にお答えしましょう。

皆様の疑問にお答えするには、そもそも毛はどこから生えてくるのかを説明する必要があります。
この図は、毛周期 --- 毛はどこから生えてくるのか?という頁から再編集したものです。 そこでは、私達は「皮脂腺開口部のすぐ下の峡部毛鞘(きょうぶもうしょう)が毛の発生母地であるとする稲葉説を紹介しました。 厚生労働省は毛乳頭と皮脂腺開口部等という2箇所を明言することによって毛の発生部位とおもわれるところをカバーしようとしたと考えられます。
私達自身は今現在は膨大部説をとっているのですが、その理由を要約します。
まずヘアーサイクルを簡単に説明します。
上図の(1)は成長期です。毛乳頭にある血管から栄養を受けて毛は成長します。
(2)は退行期に入った毛です。毛球は毛乳頭から離れていますから栄養補給は閉ざされています。
(3)は毛が抜け落ちた状態で、毛嚢はどんどん萎縮しつつあります。
(4)は萎縮の極みに達した毛嚢で、これ以上は萎縮しない状態になったところです。このときの毛嚢の底は成長期の膨大部の位置なのです。
しばらくすると、元気が回復して、(5)は毛嚢の最深部から細胞分裂がはじまったところです。
更に細胞分裂を繰り返して、(6)のように栄養血管と新生毛が現われます。すなわち、この段階で新しい毛乳頭が生まれるのです。

毛乳頭は今生えている毛の成長を司るのであって将来の毛の成長には関与しません。 そもそも休止期にある毛包には毛乳頭は存在しません。存在しない組織から毛が生えはじめるわけがありません。
永久脱毛とは、将来生えようとする毛を生えなくすることですから、攻撃対象は毛乳頭でも皮脂腺開口部でもなく、 (4)図の毛嚢の底にある細胞、すなわち膨大部なのです。稲葉説をとったとしても皮脂腺開口部ではなく峡部毛鞘が攻撃対象です。
毛乳頭や皮脂腺開口部が破壊されようと、されまいと、脱毛には関係ないのです。
でも、膨大部や峡部毛鞘が皮脂腺開口部等の「等」に含まれるとすれば、拡大解釈すれば、結局は同じではないかという意見もあるかもしれません。 でも私達はそれも違うとおもいます。
膨大部にあるとされる毛の再生を司る細胞(幹細胞といいます)を破壊する必要はないのです。破壊するのではなく、その機能を停止させてしまえばよいのです。

幹細胞を破壊せずに機能を停止させるとはどういうことでしょう。
破壊とは言葉どおり、形状そのものを変えてしまうことです。生卵を踏みつぶすことは破壊ですが、茹で卵にすることは破壊とは言いません。

医師向けの専門辞典である「株式会社南山堂南山堂医学大辞典第18版」には次のように書かれています。
変性は主として生体内高分子,とくにタンパク〔質〕と核酸とについて天然の, 生体内でのそれらの構造が一次構造は変化せずに二次以上の構造と物性ー物理化学的性質が変化することを言うので,ここではタンパク質とDNA について説明する. 1)タンパク質の変性は加熱,凍結,撹拌,吸着,希釈,超音波,紫外線,放射線,高圧などの物理的原因と,強酸,強アルカリ,有機溶媒,尿素,重金属イオン, 塩酸グアニジンなどの変性剤,界面活性剤などの化学的原因によるものとに大別,溶解度減少,流体力学的定数変化,生物活性喪失などが起こる. 変性したタンパク質を変性タンパク質denatured proteinと称し,不規則(ランダム)コイルの形をとる. 2)DNAの変性は,その溶液の温度上昇,pHの上下により,変性剤の作用によって二重らせん構造内の塩基間水素結合が切断され, 2つの一本鎖ポリヌクレオチドへ解離し,濃色効果hyperchromic effectにより260nmの吸光度が増大する.

難しいですね。広辞苑では次のように書かれています。
天然の蛋白質が種々の原因で、アミノ酸配列を変えることなく、物理的・化学的構造に著しい変化を起こし、その性質が変わる現象
これは分かりやすいです。
毛根が高温になることによって隣接する膨大部あるいは峡部毛鞘にある幹細胞の温度も上昇し、アミノ酸配列が変わらずに、 次世代の毛をつくるという機能が停止するのです。
では何度くらいになれば幹細胞を変性させることができるかというと、高温にさらされる時間にもよりますが、42℃もあれば十分ではないかと考えています。 42℃の根拠ですが、この温度になるとガン細胞が縮小するというデータがあるからです。もちろん幹細胞とガン細胞は違いますから、 それで確実かどうかは定かではありませんが、脱毛は1回勝負ではありません。 エステ脱毛は医療脱毛と違って、徹底的に安全を優先すべきですから、それぞれの組織を破壊するほどの高温にさらすべきではありません。 温度が低いゆえ、多少は蛋白変性が不確実になるかもしれませんが、 そしてそのためトータルの施術回数が増えるかもしれませんが永久脱毛は実現できるというわけです。
これが私達の考察です。私達の考察がすべての専門家に認められているわけではありませんが、 ここで説明してきた内容はレーザー脱毛の黎明期から「脱毛おたく」として過ごしてきた私達の経験から生まれたものであって、 永久保証しているにもかかわらず来院されなくなったお客様が数限りなくいらっしゃるという事実は強く申し上げさせていただきたいとおもいます。

結論

1) P-NAINをマニュアルどおりに正しく使用すれば、人体に危険を及ぼすことなく毛乳頭や皮脂腺開口部等を破壊せずに脱毛することができる。
2) P-NAINをマニュアルどおりに正しく使用するにあたっては、医師の医学的判断および技術を必要としない。
これが本頁での私達の最終結論です。

本頁を書くに至った理由は、毛乳頭や皮脂腺開口部等を破壊する脱毛行為をエステで行なってはいけないと言う厚生労働省課長通知が行政指導のルールとして 定着しつつあるからです。 私達は元々この課長通知は従来の医師法解釈からすれば根拠の乏しいものであると個人的には考えていましたから、今まで真剣に考察したことがありませんでした。 皮脂腺開口部を破壊しないことは経験的に分かっていましたし、毛乳頭は休止期には自然になくなるものなので、 それを破壊したとしても身体の構造や機能に恒久的な変化を与えるものではないので学問的に関心がなかったのです。 深く考えずにレーザーでもIPLでもメラニンに反応して脱毛できるという原理は同じなので、どちらも破壊するのかもしれないと、 たいした根拠もなく、漠然と考えていたことは事実です。 ですから、今振り返ってみると、昔の頁にはIPLが毛乳頭まで届くように図示しているものがあるのに気づきました。たとえばこれです。

冷却装置が内蔵されていないコスモライトであれば、 皮膚表面のエネルギー密度が最も大きいはずで、皮脂腺開口部附近くらいであればそれほど減弱していないかもしれません。 でも波長が600nmと短いのでP-NAINよりも浅いところまでしか届かないはずなので、上の図のようなかんじでしょうか。 P-NAINのように膨大部まで確実に届くか疑問ですし、強い出力で照射すればヤケドするので、 皮脂腺開口部を破壊することはあっても毛乳頭を破壊することはないのではないかと、今は考えています。

最後に余談ですが、東京都商品等の安全問題に関する協議会が2004年7月に エステティックサロンにおけるレーザー等を利用した脱毛機の安全性について というサロンにおけるレーザー脱毛機等の安全性に関する提案をだしています。
ここには、「皮膚の熱傷発生を防止するため、レーザー脱毛機等本体に施術部分を冷却する機能を設けること、または、それに代わる施術上の対応措置を取ること」 と書いてあります。
この内容は私達にとってはとてもうれしいものでしたが、 実はとても不思議な気がしていました。と言いますのは、これは冷却装置が内蔵されているという縛りはあるもののエステ脱毛を容認しているものだからです。 エステ脱毛が医師法違反であるなら、冷却装置の有無は関係ないはずです。 おまけに、厚生労働省は 「『レーザー光線又はその他強力なエネルギーを有する光線を毛根部に照射し、毛乳頭、皮脂腺開口部等を破壊する行為』を医師以外のものが業として行うことは 医師法17条に違反する」として、サロンが毛乳頭、皮脂腺開口部等を破壊するような高出力のレーザー脱毛機を使って施術することに対し、 医師法違反にあたるとの判断を示したと明記したうえでの提案なのです。
私達は長い間、行政の不一致とおもいこんでおりましたが今やっと理解できました。 行政の不一致ではないのです。私達の早とちり、勘違いでした。

厚生労働省は、毛乳頭や皮脂腺開口部等を破壊する脱毛行為をエステで行なってはいけないと言っているだけで、 脱毛行為全般を否定しているわけではありません。
そして、都は脱毛するのならば冷却装置を設けなさいと言っているだけで、毛乳頭や皮脂腺開口部等を破壊する脱毛行為を肯定しているわけではありません。
厚生労働省と都は別の話をしているのです。まったく矛盾はありません。
ここまで書いてきて厚生労働省の2回目の通知も理解できるようにおもえてきました。 2回目の通知から脱毛に関する部分だけを転写すると次のとおりです。

第1 脱毛行為等に対する医師法の適用

以下に示す行為は、医師が行うのでなければ保健衛生上危害の生ずるおそれのある行為であり、 医師免許を有しない者が業として行えば医師法第17条に違反すること。
(1)用いる機器が医療用であるか否かを問わず、レーザー光線又はその他の強力なエネルギーを有する光線を毛根部分に照射し、 毛乳頭、皮脂腺開口部等を破壊する行為

あらためて解釈すると、 「皮膚をヤケドさせてはいけません。ヤケドさせないように毛乳頭や皮脂腺開口部等を破壊させるためには医師の医学的判断および技術が必要です」と読めます。 そう読めば厚生労働省の通知は正論と言えます。
従来は永久脱毛を実現するには毛乳頭の破壊が必須と考えられてきた事実があります。 皮膚冷却装置が内蔵されていない機械を使って毛乳頭を破壊するほどの強力なエネルギーを照射すれば皮膚がヤケドする危険は相当に高いです。 ヤケドさせないためには相当な医学的知識と技術が必要であるというのは私達も同意します。
厚生労働省の1回目の通知がだされたのは今から7年前です。その当時のエステ業界には冷却装置内蔵の脱毛機はありませんでした。 医療業界であってもごく僅かでした。
この通知は冷却装置のない時代にだされたもので、今日の状況はその当時とは相当に異なります。 7年も経てば機械のハードウエアもソフトウエアも別物と言っても過言ではないでしょう。
厚生省健康政策局総務課が編集した医療法・医師法解という本(株式会社 医学通信社1994年発行第16版)があります。 その428頁には医師法第17条の解釈があります。「医師でなければ、医業をなしてはならない」というのが医師法17条ですが、以下原文のまま転写します。
【解】「医業」とは「医行為」を業とすることであり、また、「医行為」とは、「当該行為を行なうにあたり、 医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危険を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為」であり、 「業とすること」とは、「反復継続する意思をもって行なうこと」であると解される。 ・・・中略・・・ 具体的な事例については、個々につき、一般の社会通念に照らして判断されるべきものであろう。

温度コントロールシステムまで登載しマイナス10度まで冷える強力な冷却装置を内蔵したP-NAINを用いた脱毛行為が医行為であるかどうかを判断する場合、 7年前の社会通念ではなく、今現在の社会通念で判断されるべきだと考えます。

おわりに

P-NAINが登載している冷却装置は皮膚表面の温度をマイナスにまでコントロールできるので皮膚表面はヤケドしませんし、 皮膚表面に近い皮脂腺開口部附近を破壊することはありません。

またP-NAINのフラッシュ光線は、レーザー光線と違って拡散するために皮下組織にある毛乳頭を破壊することもありません。

皮脂腺開口部と毛乳頭の中間にある膨大部附近を選択的に加温して、そこにある幹細胞の機能を停止させます。

これは今までの脱毛理論とは相当に異なりますので、選択的温熱脱毛法(Selective Hyperthermic Epilation)と名付けさせていただきたいとおもいます。

選択的温熱脱毛法は、行なうにあたって医師の医学的判断および技術は不要です。
LightSheerでは条件さえ揃えば毛乳頭は破壊されますが、 その場合もゆっくりと施術さえすれば医師の医学的判断および技術を必要とせずに脱毛施術を行なうことができるのは勿論のことです。

長々とお読みくださいましてありがとうございました。

2007年4月19日

本日の朝刊各紙で次のような報道がありました。
☆茨城県警、無資格の従業員にレーザー脱毛させていた美容外科医を医師法、医療法違反で逮捕☆
5月17日、茨城県警生活環境課は医師免許のない美容外科医院の事務員にレーザー脱毛等の医療行為をさせていた東京都品川区大崎の医師(44歳)を医師法違反と 医療法違反の疑いで逮捕した。 調べによると容疑者は平成17年10月から平成18年3月にかけて、自身の経営していた茨城県水戸市とつくば市の美容外科医院で、 医師免許のない事務員ら計8人に、来院した男女12人に対してレーザー装置を使って脱毛する医療行為をさせた疑い。 また、水戸市の医院は平成18年4月に廃院したが、それ以降も無届けで診療を続けていた疑い。 容疑者は調べに対して「人手が足りなかった」と容疑を認めている。

医療機関の多くでは、脱毛行為を医療と認識しながら医師自らは行なっていないのが実情です。 医師が診察して出力を決めて看護師に施術を任せているところがほとんどです。 (この事件のように看護師でもないスタッフが行なっているところも多々あります)
彼らは医師の管理下において看護師が行なうのは合法であると言いますが、私達は疑問です。
保健師助産師看護師法という法律の第5条で看護師の業務は、「傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助」と規定されています。 看護師は医師の補助ができるだけなのです。
医師が○○ジュールという出力で施術しなさいと指示して、そのとおりに行なうのであれば医師の補助と言えますが、 実際は痛みや反応によって臨機応変に出力を変えなければいけません。 医師の医学的判断によって出力を決めなければ危険であるならば、それを看護師にはさせるべきではありません。
厚生労働省が運営している大病院でも看護師が注射をすることがあります。でもそれは医師の補助として指定された薬剤を注射しているだけです。 医師が指定したのとは別の薬剤を注射するのは違法ですし、同じ薬剤であっても量を変えるのは業務範囲を逸脱しています。
医療機関で脱毛を行なうにしても、 医師自らが施術しないのであれば、毛乳頭や皮脂腺開口部を破壊する脱毛は行なってはいけないというのが厚生労働省の考えということのようです。 (法律は万人に平等に適用されるのですから当然といえば当然です)

医療機関であってもエステであっても毛乳頭や皮脂腺開口部を破壊しない永久脱毛の普及が急務であるとおもいます。 私達は選択的温熱脱毛法を独占するつもりはありません。ムダ毛を気にしない女性がいるでしょうか。 日本中の全ての女性を私達が独占することなど到底無理です。一日でも早く普及させれば、一人でも多くのヤケドが防げます。 そのように努力していかなければとおもいを新たにするところです。

2007年5月18日

本ページの結論はP-NAINを使って経験的にヤケドを起こさずに永久脱毛できているという事実と科学的推論からのものです。 正しい結論であるとの自信はありますが、推論でしかないと言われればそのとおりです。
そこで実際に皮膚の温度を測定してみました。 こちらをお読みください。

2003年12月28日
渋谷高橋医院院長 高橋知之




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